「同一労働同一賃金」の例外となる会計年度任用職員――自治体に求められる説明責任とは

 2020年から本格的に始まった「同一労働同一賃金」。民間企業では、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に不合理な待遇差を設けることが禁止され、企業にはその違いを合理的に説明する責任が求められています。

現在では、「なぜこの手当は支給されないのか」「なぜ賞与に差があるのか」といった疑問に対し、企業は職務内容や責任の違いを根拠として説明できなければなりません。

ところが、このルールには大きな例外があります。

それが、地方自治体で働く会計年度任用職員です。

会計年度任用職員は地方公務員であるため、パートタイム・有期雇用労働法の適用対象外です。そのため、民間企業に適用される「同一労働同一賃金ガイドライン」や待遇差の説明義務は直接及びません。

もちろん、公務員制度には独自の考え方があります。

正規職員には、長期的な人材育成を前提とした人事異動、政策立案、管理監督、災害対応など、組織全体を支える役割が期待されています。一方、会計年度任用職員は一定の職務に限定して任用されるため、制度上は両者の職責が異なるという整理です。

この考え方自体には一定の合理性があります。

しかし、現場ではどうでしょうか。

自治体の窓口、保育所、図書館、学校、福祉部門などでは、会計年度任用職員が住民サービスの中心を担っているケースが少なくありません。住民から見れば、正規職員と同じ窓口で同じ説明を行い、同じ責任感を持って仕事をしているように映ることもあります。

もちろん、目に見える業務が同じだからといって、職責まで同じとは言えません。しかし、その違いが職員本人や住民に十分説明されている自治体は、決して多くないのではないでしょうか。

もしこれが民間企業であれば、「業務内容や責任にどのような違いがあり、その違いが待遇差にどう結び付いているのか」という説明が求められます。

一方、自治体では、そのような説明責任が法的には同じレベルで課されていません。

ここに、制度上の大きなギャップがあります。

さらに、2024年度からは会計年度任用職員にも勤勉手当を支給できるようになり、処遇改善は進みました。しかし、これはあくまでも制度の一部を見直したものであり、「同一労働同一賃金」を実現するための制度改革ではありません。

近年は人材不足が深刻化し、多くの自治体が会計年度任用職員の採用に苦慮しています。募集しても応募が集まらない、採用しても短期間で退職してしまうという声も少なくないようです。

その背景には、賃金水準だけでなく、「自分の仕事が正当に評価されているのか分からない」という納得感の問題もあるのではないでしょうか。

私は、会計年度任用職員に民間企業と全く同じ制度をそのまま導入すべきだと言いたいわけではありません。公務員制度には、人事異動や組織運営、行政の継続性を支えるという民間企業とは異なる役割があり、その特殊性は十分に尊重されるべきです。

しかし、そのことを踏まえたとしても、実質的に正規職員と同等の職務を担っているにもかかわらず、待遇差の合理性について十分な説明がなされない現状は見直されるべきではないでしょうか。少なくとも民間企業に求められているように、「職務内容」「責任の程度」「人材活用の仕組み」の違いを客観的に分析し、それに基づいて待遇差を説明できる制度への転換が必要です。

さらに今後は、会計年度任用職員についても、民間企業の「同一労働同一賃金」の考え方を基本とした法制度へ段階的に改めていくことを検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。自治体は、公的機関として、労働関係法令を遵守した適正な労務管理を率先して実践することが求められる立場にあるといえます。その自治体自身が、合理的な待遇差を説明できる制度を整備することは、行政に対する信頼を高めることにもつながると考えます。

人口減少に伴う人材確保競争が激しくなる中、公務員だから民間とは違うという考え方だけでは優秀な人材を確保することは難しくなっています。会計年度任用職員制度も導入から数年が経過し、その課題は明らかになりつつあります。公平性と納得感を備えた制度へと見直しを進めることこそ、これからの地方自治体に求められる改革ではないでしょうか。

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