なぜトップのパワハラが相次ぐのか
最近、地方自治体の長や事務のトップ、企業の役員クラスのパワハラ認定の報道が相次いでいます。
本来、組織のトップは職場のパワーハラスメントを防止する立場にあるはずです。それにもかかわらず、なぜこうした問題が繰り返し発生するのでしょうか。
背景として考えられるのは、組織の中で権限を持つ立場ほど自らの言動を客観的に見直す機会が少ないという点です。強いリーダーシップの発揮とパワハラの境界線が曖昧になり、「指導のつもりだった」「組織を良くするためだった」という認識のまま、結果としてハラスメントと評価されるケースが少なくありません。
しかし、現在の企業経営において、パワハラ問題は単なる職場内のトラブルでは済みません。企業の社会的信用の低下、従業員の離職、損害賠償リスクなど、経営に直結する重大な問題となります。
厚生労働省の「パワーハラスメント防止指針(いわゆるパワハラ防止ガイドライン)」では、職場のパワーハラスメントを次の三つの要素をすべて満たすものと定義しています。
・優越的な関係を背景とした言動であること
・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
・労働者の就業環境が害されること
また、ガイドラインでは具体例として次の六類型が示されています。
・身体的な攻撃
・精神的な攻撃
・人間関係からの切り離し
・過大な要求
・過小な要求
・個の侵害
重要なのは、パワハラかどうかは「指導する側の意図」ではなく、言動の内容や状況、受け手への影響などを踏まえて客観的に判断されるという点です。トップが「指導のつもり」であったとしても、業務上必要な範囲を超えていればパワハラと評価される可能性があります。
さらに、2020年の法改正により、企業がパワハラ防止のための講じるべき具体的な対策として
・パワハラ防止方針の明確化と周知
・相談窓口の設置
・事実関係の迅速な対応
・被害者への配慮措置
・対象者への不利益取扱い禁止と労働者に対する周知
があげられています。
これらの措置は形式的に整えるだけでは十分とはいえません。組織の風土としてパワハラを許さない姿勢を明確にすることが重要であり、その中心にいるのが経営者です。
経営者自身の言動は組織文化に大きな影響を与えます。トップが強い口調で部下を叱責する職場では、同様の行動が管理職にも広がりやすくなります。一方、相手を尊重するコミュニケーションを重視するトップのもとでは、職場全体の風土も変わります。
パワハラ防止は人事部門だけの課題ではなく、経営課題そのもの。だからこそ経営者自身がガイドラインを理解し、自らの言動を振り返る姿勢が求められます。
最近の報道は、決して他人事ではない。
「トップだからこそ気をつける」という意識が、健全な職場づくりの出発点になるのではないでしょうか。
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