大学法人化から学ぶ組織ガバナンス ― 親会社・子会社との共通点とは

大学の法人化は、組織運営の自律性を高めることを目的として進められてきましたが、その実態は設立団体との関係性によって大きく左右されます。この構造は、企業における親会社と子会社の関係にも通じる部分があり、労務管理の観点からも示唆を与えるものです。

まず、国立大学についてです。設立団体は文部科学省(厳密には文部科学省が設立した国立大学法人が国立大学を設置している。)ですが、法人化後は各大学が独立した法人として運営されています。文部科学省は各大学に一定の運営費を交付していますが、大学行政としての方針や施策を示すものの、個々の大学の具体的な運営には基本的に関与しません。

一方、公立大学の設立団体は地方自治体(厳密には地方自治体が設立した公立大学法人が公立大学を設置している。)です。制度上は国立大学と同様、独立性が確保されていますが、地方自治体は施策として大学を設置し財政支出(運営費交付)をしているため、大学運営に一定程度関与している実態があります。いわゆる「資金拠出に伴う発言力」の問題です。

この関係性は、企業における親会社と子会社の関係、とりわけ財務的依存度が高い子会社のケースと類似しているともいえます。

ここで労務管理上重要となるのが、「実質的使用者性」という考え方です。企業グループにおいて、親会社が子会社従業員に対して具体的な指揮命令を行い、人事評価や労働条件に実質的に関与している場合には、形式上は別法人であっても、親会社が使用者としての責任を問われる可能性があります。

もっとも、この点については、公立大学と地方自治体の関係にそのまま当てはめることはできません。地方自治体が設立団体として大学運営に一定の関与を行っていたとしても、それをもって直ちに自治体に「実質的使用者性」が認められるという性質のものではありません。あくまで公立大学法人は独立した法人であり、労務管理上の使用者責任は原則として当該法人に帰属します。

したがって、公立大学の問題は、企業における親子会社間のような使用者責任の帰属というよりも、「法人の自律性がどこまで確保されているか」というガバナンスの問題として捉えるべきものです。

もっとも、地方自治体の関与が個別具体的な人事や組織運営にまで及ぶ場合には、法人化の趣旨である自主性・自律性を損なうリスクがある点は否定できません。これは法的責任の問題とは別に、組織運営上の健全性という観点から重要な論点です。

大学法人の事例は、労務管理の直接的なリスク構造とは異なるものの、組織間関係における統制と自律のバランスを考えるうえで有益な示唆を与えます。制度上の独立性と実態上の関与のギャップをいかに適切にマネジメントするか、この視点は、企業経営においても重要な課題であると言えるでしょう。

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