退職金の「全額不支給」はどこまで許されるのか
【京都市(退職手当事件)事件 令和7年最高裁判決】
本件は、京都市の市営バス運転手が運賃1000円を着服したこと等を理由に懲戒免職となり、退職手当(約1,200万円)が全額不支給とされた事案です。
争点は、長年勤務した職員に対し、退職手当を一切支給しない処分が許されるかという点でした。
第二審は、退職手当の後払い賃金的性格や生活保障の側面を重視し、また被害金額が少額であることなどから全額不支給は行き過ぎとして違法と判断しました。
しかし、最高裁判所はこれを覆し、全額不支給を適法としました。
理由として、「着服はバス事業の運営の適正を害するもの」のみならず「同事業の信頼を大きく損なうもの」であるとし、たとえ少額であることなどを考慮しても全額不支給は裁量権の範囲を逸脱、乱用したものではないと判断しました。
一方、民間企業における判例については、痴漢行為による懲戒解雇されたケースで退職金の3割支給を認めた小田急電鉄[退職金請求]事件(平成15年東京高裁判決)や運転手が酒気帯び運転で懲戒解雇されたケースで退職金の3分の1支給を認めたヤマト運輸事件(平成19年東京地裁判決)など、懲戒解雇が有効であっても退職金の一部支払いの請求を認めるケースが多く見られます。
したがって
実務上は、退職金の不支給を検討する際、就業規則で不支給理由を定めていることが大前提のうえで
①非違行為の内容・悪質性、
②職務との関連性、
③企業・組織への影響など
を総合的に判断することが不可欠です。
安易な判断は紛争リスクを高めるため、専門家の関与も視野に入れるべきです。
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